仮想通貨をめぐる話題①
2017年以降、ビットコインをはじめとする仮想通貨について、その価値が約1年間でなんと
10倍以上に高騰したこともあり、一部の投資家のみならず、広く認知度と関心が高まりました。
しかし、2018年の年初は仮想通貨の価値が軒並み暴落。これによって、仮想通貨は「持っていると危ないもの」「よくわからないもの」という認識に変わりつつあるのも事実です。
※内容は執筆時のものです。変更等がある場合があります。
仮想通貨をめぐる話題①
2017年以降、ビットコインをはじめとする仮想通貨について、その価値が約1年間でなんと10倍以上に高騰したこともあり、一部の投資家のみならず、広く認知度と関心が高まりました。しかし、2018年の年初は仮想通貨の価値が軒並み暴落。これによって、仮想通貨は「持っていると危ないもの」「よくわからないもの」という認識に変わりつつあるのも事実です。
※内容は執筆時のものです。変更等がある場合があります。
仮想通貨とは、日々価格が変動する暗号理論を用いて電子的に発行される通貨で、貨幣は実在しません。仮想通貨に関しては改正資金決済法が2017年4月1日より施行され、国税局から同年12月には仮想通貨の取扱いFAQが発表されるなど制度整備がなされたため、今後は仮想通貨のさらに利用拡大が予想されます。しかし年初の暴落を受け、「仮想通貨は良いものか悪いものか」「投資先として儲かるかどうか」という話題で持ちきりです。今回は仮想通貨が現れた本質的なところを考えてみたいと思います。
まず、通貨とは何かを押さえる必要があります。私たちが普段使っている通貨は「法定通貨、流通通貨(以下、通貨)」と呼ばれ、現在世界に流通している通貨(日本円、米国ドル、欧州ユーロ、人民元など)の数は180種類以上あると言われています。当たり前ですが、これらの通貨は国家、および国家が運営に関与する銀行によって管理されています。つまり通貨は、①通貨を発行してよい(許可されている)のは国家のみ、②通貨を管理できるのは国家が運営する銀行のみ、という定義が念頭にあります。例えば日本円を管理する日本銀行は、普通銀行(私たちが利用する一般的な銀行)を通して世の中に出回る通貨の量をコントロールし、物価や経済の動きを誘導します。好景気で通貨の量が過剰な時は供給を減らし、不景気の時は通貨の流通量を減らすといった具合です。世の中の経済を操作する国家は、“通貨を通じて社会を支配している”とも言えるでしょう。
では、世界中の人々は、通貨を中心に社会生活を送ることができていたにも関わらず、仮想通貨はなぜ私たちの目の前に現れたのでしょうか。それは「仮想通貨は社会にとって必要だから」というのが大きな理由です。言い換えれば「国家に支配された通貨の不便さの解消」が仮想通貨の出現した背景にあるのです。ではその不便さとは何なのでしょうか。
1.銀行の手数料が高い(決済の不便さ)
銀行は膨大な人員をかかえており、また銀行が管理する中央コンピュータは、強固なセキュリティが求められるため莫大な経費がかかり、預金の引き出しや決済システムなどのサービスを受ける際は手数料が発生します。日々のお金の支払いの都度手数料が発生すれば、その積み上げで利用者は多額の負担が強いられます。
2.通貨の移動が規制される(送金の不便さ)
各国の法律上、特定の国・地域・産業に対して送金が禁じられていたり、送金額の上限があったりするなど、国家間の送金が制限されている場合があります。またこれらの規制がなくても、高額な送金・為替手数料がかかる、送金理由や金額などの申請が面倒など、利用に対して不便を感じる場面が多々あります。
3.通貨の利用履歴が監視される
国家は管理下にある銀行、そして私たちが所有する銀行口座を監視しようとします。その目的は犯罪や脱税の防止、または政治的な意向もあり、利用履歴の監視によって自由な活用ができない可能性もあります。
国家権力に支配される通貨に対し、仮想通貨は発行主体・運用機関を持たないため、多くの不便さや規制から解放されるという特徴があります。振込においては仲介機関が存在しない(P2P=ユーザー間で直接取引する)ため手数料はかからず、確認も容易で、海外送金も多くの場合手数料なしに即日着金させることが可能です。仮想通貨は匿名性も高く国家の監視が及ばなくなり、譲渡や払い戻しも容易です。もちろん仮想通貨が国家の管理下にないため甘いセキュリティが露呈し、2018年1月に仮想通貨「NEM(ネム)」が580億円流出した事件は記憶に新しいところです。一長一短あるものの、仮想通貨の出現は「普通銀行の必要性は失われつつある」というメッセージとも受け取れます。
現在(2018年3月)、仮想通貨の種類は1,500種類を超えていると言われています。2017年1月時点では約700種類だったので、この1年間で2倍以上に膨れ上がってきており、その勢いを感じるとともに、仮想通貨はもはや“誰でも作れる通貨”となっています。マスコミは投資としての損得に目をつけがちですが、本質的な着目点は「社会に必要なものを作り出せば、それは国よりも一個人が勝つ時代へ」という点です。仮想通貨の出現は、新しい社会の訪れの兆候と言えるでしょう。
[執筆者]
上田 智雄 (うえだ ともお)
1975年生まれ。税理士。いっしょに税理士法人(渋谷区恵比寿)代表社員、デルソーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役。主な監修本に、『納税で得する一覧表』、『取り戻せる税金一覧表』、『人生の節目の書類書き方教えます』(以上、サプライズBOOK)などがある。