会計税務から読み取る
フィンテック③
2016年、日本にApple Pay(アップルペイ)というモバイル決済が上陸し話題となりました。Apple Payはお店の商品やサービス料金を支払う際に、スマートフォンをかざすことで決済が行えるフィンテックサービスのひとつです。今やコンビニやレストラン、タクシーなど、様々な店舗のレジで、このようなモバイル決済の端末が置かれるようになってきています。Apple Payは日本に大きなインパクトを与えた出来事でしたが、他国と比べるとやや遅れ気味というのが本音かもしれません。
*フィンテックとは、「ファイナンス(Finance、金融)」と「テクノロジー(Technology、技術)」の2つの言葉を融合して作られた言葉です。
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フィンテック③
2016年、日本にApple Pay(アップルペイ)というモバイル決済が上陸し話題となりました。Apple Payはお店の商品やサービス料金を支払う際に、スマートフォンをかざすことで決済が行えるフィンテックサービスのひとつです。今やコンビニやレストラン、タクシーなど、様々な店舗のレジで、このようなモバイル決済の端末が置かれるようになってきています。Apple Payは日本に大きなインパクトを与えた出来事でしたが、他国と比べるとやや遅れ気味というのが本音かもしれません。
*フィンテックとは、「ファイナンス(Finance、金融)」と「テクノロジー(Technology、技術)」の2つの言葉を融合して作られた言葉です。
Apple Payをはじめとするモバイル決済の利用について、現在最も普及が進んでいるのが中国だと言われています。日本銀行のレポートによると、モバイル決済の普及率は、日本が6.0%、アメリカが5.3%なのに対して、中国では98.3%と異常な高さを示しています。
中国では、日本のLINE(ライン)に似たサービスを展開するWeChat(微信、ウィーチャット)が手掛けるWeChat Pay(ウィーチャットペイ)や、オンライン・マーケットを運営するアリババが運営するAlipay(アリペイ)などの利用が代表的で、それらの利用があらゆる場面で進んでいます。
その利用の多さは圧倒的で、飲食店やスーパーマーケット、交通機関はもちろんのこと、結婚式のご祝儀やお賽銭、物乞いをするホームレスへの支払にまでモバイル決済が行われているそうです。スマートフォンさえ持っていれば支払の場面で困ることはなく、財布や小銭を使わないで1日を過ごせると言っている人がいるくらいです。
モバイル決済の普及率が低い日本やアメリカなどは、「セキュリティに不安」や「現金の方が便利」といった理由で利用が進んでいないようです。これに対して中国では、以前は偽札が多く出回っていたこともあり、「モバイル決済の方が安心・安全」と考えたのが普及の理由のひとつとして挙げられ、これにスマートフォンの発達時期が重なったのが利用をさらに助長したと言われています。
中国で爆発的に伸びているモバイル決済のAlipayはすでに日本にも上陸済みです。中国からの観光客などを取り込みたい店舗の多くがAlipayの導入を検討しており、現金が主流の日本でも中国で発達した技術や慣習が入ってきていることで、モバイル決済やフィンテックがさらに広がっていくことにもつながっていくと考えられます。
1. 選ばれるお店づくりに活かす
現在、市場はコンビニエンスストアや、ECサイトの代表格であるAmazon(アマゾン)といったショートタイムショッピングなどが活況を呈しています。その中で「決済が簡単に行えること」「ポイントが蓄積されてお得に購入できること」も購入先を選ぶ動機になりつつあります。お店づくりには品数、立地、接客など、いろいろと考えなければならないことがたくさんありますが、これからは決済方法まで含めた“商売づくり”が必要になってくることは確かです。
2. 管理会計はどんどん高度化していく
「売れるものにお金をかける」、そして「売れないものにはお金をかけない」。これが管理会計の基本原則です。モバイル決済にその顧客や販売の情報を結びつけていけば、膨大なデータを収集することができます。管理会計を駆使しながら、より高度かつスピーディに情報を利用することで、無駄のない資金投下の判断ができるようになります。
3. 資本回転数を上げていく
モバイル決済を行った代金が、会社の口座へ入ってくる入金サイトも技術の進化とともに早まってきています。そしてビジネスの成功は、お金を動かした総量で表されます。もしフィンテックの技術を組み合わせ、お金を動かすスピードを上げられれば、小資本でも高速回転でお金を動かすことができるようになり、莫大な年商規模を打ち立てることも可能になっていくと思われます。よって、個人企業で年商100億円というのも夢ではなく、様々なビジネスチャンスが生まれることで、市場も活性化されていくと思われます。
モバイル決済は始まったばかりです。そしてこれから先、さらに様々なフィンテック技術が出てくるでしょう。これらの技術を組み合わせて使うことで、大幅に効率を上げることができると考えられます。社会環境が大きく変わってきている今、会社それぞれの課題は異なります。会社はこれらの技術で対策を行うことで、違った未来が見えてくると思います。
しかし、どれだけ技術が進歩しても、会社がそれを使いこなさなければ何の意味もありません。今後必要になってくるのは、これらを実際の現場に落として使えるようにするための現場のアイディアであり、その技術と現場をつなげる会計人材へのニーズはさらに高まっていくはずです。
[執筆者]
上田 智雄 (うえだ ともお)
1975年生まれ。税理士。いっしょに税理士法人(渋谷区恵比寿)代表社員、デルソーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役。主な監修本に、『納税で得する一覧表』、『取り戻せる税金一覧表』、『人生の節目の書類書き方教えます』(以上、サプライズBOOK)などがある。