2019年春号特集 P2 「働き方改革関連法」が、いよいよ4月からスタート！年次有給休暇取得義務化の実務ポイント

はじめに
この4月より、労働基準法の改正で、年次有給休暇（以下、有休という）の取得義務が開始されます。これまで、有休の取得率に課題を感じつつ解決を先延ばしにしていた企業も、本腰を入れて取り組む必要があります。今号では、取得義務化に向けた企業の実務対応の進め方について解説していきます。

初めに今回の法改正の概要を整理しましょう。有休の取得義務化は、年10日以上の有休が付与される労働者に対し、付与日を「基準日」とした1年以内に5日間、企業が時季を指定して取得させる必要があります。法改正の詳細は図表１のとおりです。

■ 図表１法改正の概要

1.

取得義務の対象者

2019年4月1日以降に年10日以上の有休が付与される労働者
※有期契約労働者、パート・アルバイトなどの有休が比例付与される労働者も対象

2.

5日間の取得時季の指定方法

(図表2参照)

◎	有休の付与日（基準日）から1年以内に5日間、企業が時季を指定して取得させる
◎	労働者自ら時季指定して取得した日、計画的付与制度で取得した日は5日間から控除できる
◎	企業が時季指定する場合、労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなくてはならない
◎	有休のうち1日単位、半日単位（0.5日）は年5日にカウントできるが、時間単位で取得した有休は取得日数にはカウントされない【ダブルトラックによる基準日の特例】
◎	ダブルトラックとは異なる基準日を起算とする時季指定義務の期間に重複が生じること
◎	ダブルトラックでは、重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間の長さに応じ比例按分した日数を、当該期間に時季指定して取得させる基準日の特例が認められる。

3.

年次有給休暇管理簿の作成

労働者ごとに基準日・取得日・取得日数を明記した管理簿を作成し、3年間保存が必要

4.

罰則

取得義務に未達の場合には、30万円以下の罰金（未達者１人につき1罪）

■ 図表2

初めに今回の法改正の概要を整理しましょう。有休の取得義務化は、年10日以上の有休が付与される労働者に対し、付与日を「基準日」とした1年以内に5日間、企業が時季を指定して取得させる必要があります。法改正の詳細は図表１のとおりです。

■ 図表１法改正の概要

1.

取得義務の対象者

2019年4月1日以降に年10日以上の有休が付与される労働者
※有期契約労働者、パート・アルバイトなどの有休が比例付与される労働者も対象

2.

5日間の取得時季の指定方法

(図表2参照)

◎	有休の付与日（基準日）から1年以内に5日間、企業が時季を指定して取得させる
◎	労働者自ら時季指定して取得した日、計画的付与制度で取得した日は5日間から控除できる
◎	企業が時季指定する場合、労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなくてはならない
◎	有休のうち1日単位、半日単位（0.5日）は年5日にカウントできるが、時間単位で取得した有休は取得日数にはカウントされない【ダブルトラックによる基準日の特例】
◎	ダブルトラックとは異なる基準日を起算とする時季指定義務の期間に重複が生じること
◎	ダブルトラックでは、重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間の長さに応じ比例按分した日数を、当該期間に時季指定して取得させる基準日の特例が認められる。

3.

年次有給休暇管理簿の作成

労働者ごとに基準日・取得日・取得日数を明記した管理簿を作成し、3年間保存が必要

4.

罰則

取得義務に未達の場合には、30万円以下の罰金（未達者１人につき1罪）

■ 図表2

取得義務化に向けた実務対応は、自社の有休取得の現状を分析し、その結果から自社に合った有休ルールと管理方法を決定して、個人単位で進捗を管理していく必要があります。図表3が実務対応の全体図となります。この後、各ステップの詳細を解説していきます。

■ 図表3 実務対応の全体図

取得義務化に向けた実務対応は、自社の有休取得の現状を分析し、その結果から自社に合った有休ルールと管理方法を決定して、個人単位で進捗を管理していく必要があります。図表3が実務対応の全体図となります。この後、各ステップの詳細を解説していきます。

■ 図表3 実務対応の全体図

現状分析では自社の有休ルールの仕組みと取得率を確認します。それぞれで確認するポイントは図表4となります。取得率の分析の結果、未取得の要因が組織にある場合、本人やその上司の当事者に任せるだけでなく、会社全体で解消に取り組んでいくことが必要です。

■ 図表4 現状分析の確認ポイント

1.	仕組	自社の有休ルールを整理し、複雑かつ不明瞭な部分がないか次の視点で確認する。 ①自社の企業規模、採用状況にあった期日管理ができるか ②取得状況が可視化されており、各人の取得状況を随時把握できる状態にあるか
2.	取得率	「個人単位」と「組織単位」で分析し、未取得の要因がどこにあるかを特定する。 ①個人単位：複数年で分析し、個人ごとの深刻度を整理する（図表5参照） ②組織単位：複数のカテゴリーに分類して比較分析する【カテゴリー分類例】拠点別、部署別、職務別、役職別、など

■ 図表5 個人単位の有休取得率の分析例

従業員名	2018年度	2017年度	2016年度	評価
Aさん	10日取得	2日取得	8日取得	Z
Bさん	3日取得	4日取得	7日取得	ZZ
Cさん	2日取得	1日取得	4日取得	ZZZ

※Zの数が多いほど状況が深刻となります。

5日未満の取得が突発的な事情によるものなのか、常態的な事情によるものなのかを整理するために、単年度で終わらせず、複数年で分析する。


Q	分析の結果、取得率が高い場合でも企業が時季指定する必要があるのか。
A	法改正の主旨は取得率の低い従業員の環境改善にあるといえます。取得率が高く、各人が5日以上取得できる環境にある場合は、基本的には、引き続き個人主導の管理に任せる方針で問題ないといえます。一方、取得率が低い場合は、企業主導による管理が必要となります。

現状分析では自社の有休ルールの仕組みと取得率を確認します。それぞれで確認するポイントは図表4となります。取得率の分析の結果、未取得の要因が組織にある場合、本人やその上司の当事者に任せるだけでなく、会社全体で解消に取り組んでいくことが必要です。

■ 図表4 現状分析の確認ポイント

1.	仕組	自社の有休ルールを整理し、複雑かつ不明瞭な部分がないか次の視点で確認する。 ①自社の企業規模、採用状況にあった期日管理ができるか ②取得状況が可視化されており、各人の取得状況を随時把握できる状態にあるか
2.	取得率	「個人単位」と「組織単位」で分析し、未取得の要因がどこにあるかを特定する。 ①個人単位：複数年で分析し、個人ごとの深刻度を整理する（図表5参照） ②組織単位：複数のカテゴリーに分類して比較分析する【カテゴリー分類例】拠点別、部署別、職務別、役職別、など

■ 図表5 個人単位の有休取得率の分析例

従業員名	2018年度	2017年度	2016年度	評価
Aさん	10日取得	2日取得	8日取得	Z
Bさん	3日取得	4日取得	7日取得	ZZ
Cさん	2日取得	1日取得	4日取得	ZZZ


Q	分析の結果、取得率が高い場合でも企業が時季指定する必要があるのか。
A	法改正の主旨は取得率の低い従業員の環境改善にあるといえます。取得率が高く、各人が5日以上取得できる環境にある場合は、基本的には、引き続き個人主導の管理に任せる方針で問題ないといえます。一方、取得率が低い場合は、企業主導による管理が必要となります。