仮想通貨をめぐる話題④
2008年にビットコインが提唱されて以来、約10年が経ちました。空想が少しずつ形になり、2018年9月時点で、仮想通貨全体の時価総額は25兆円以上にまで膨れ上がっています。商用取引に仮想通貨がはじめて利用されたのは、わずか2枚のピザの買い物だったそうで、提唱した人たちはここまで成長するとは想像しなかったことでしょう。
※内容は執筆時のものです。変更等がある場合があります。
仮想通貨をめぐる話題④
2008年にビットコインが提唱されて以来、約10年が経ちました。空想が少しずつ形になり、2018年9月時点で、仮想通貨全体の時価総額は25兆円以上にまで膨れ上がっています。商用取引に仮想通貨がはじめて利用されたのは、わずか2枚のピザの買い物だったそうで、提唱した人たちはここまで成長するとは想像しなかったことでしょう。
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日本では、法律で「通貨」として認められているのは、いわゆる紙幣と小銭(=日本銀行券と貨幣)の2種類のみです。仮想通貨の登場は、国家の金融政策のキーワードとなる「通貨」を揺るがしかねない存在であり、国としては慎重に対処したいと言うのが本音だと思います。とはいえ、仮想通貨の流通量は増え社会に与える影響が大きいことからその存在を認め、ここ1、2年で法律関連等の整備も進みつつあります。
では、法整備のうち、仮想通貨に関わる税制はどのようになってきているのでしょうか。日本においては、仮想通貨の保有目的が「投機(利益を狙う取引)」のケースが多いので、ここでは投機目的の税制を見ていくことにしましょう。
企業における仮想通貨の投機利益に対して適用される主な税目には、法人税と消費税の2つが挙げられます。それぞれの仮想通貨の取扱いは次のようになります。
① | 法人税の取扱い |
法人税とは、ビジネスの「儲け」に対して納める税金です。法人税法上での仮想通貨の儲けの認識は、仮想通貨を売った時(通貨との交換時)、または利用した時(商品やサービス利用の決済時)にのみ発生します。つまり、仮想通貨を保有し続けている限り、仮想通貨の市場価格がいくら高騰・暴落したとしても法人税には一切の影響がありません。よって、値下がりによる損失を税金に反映させたい場合は、売るか利用するかしかありません。 | |
② | 消費税の取扱い |
消費税は、モノやサービスの「消費」に対して課される税金です。仮想通貨の売却・利用については、2017年7月1日より、消費税は非課税と明示されました。これは仮想通貨を「通貨」と代替する「支払手段」と認めた表れであり、国の金融政策の転換点として大きな衝撃がありました。 なお、比較事例として金地金(金の延べ棒のこと)があります。金も仮想通貨と同様に市場価格が存在し、購入や売却も容易に行えますが、こちらは「通貨」の代替とはされず、売買にかかる消費税は課税とされ、“消費されるもの”という扱いになっています。 |
個人で仮想通貨を売却し、儲けが出た場合は所得税が課されます。分類としては「雑所得」となり、仮想通貨の1年間の利益が20万円を超えれば納税義務が発生します。所得税は、他の所得(給与や不動産の収入など)と合算して計算され、収入が多ければ多いほど税率が高くなるため、その人の所得によって適用される税率は異なります。
仮想通貨を保有していた方が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。亡くなった方の財産総額が基礎控除額(3000万円+相続人1人あたり600万円)を超える場合は、その財産に対して相続税が課されます。もし仮想通貨を持っていた場合には、亡くなった時の仮想通貨の時価に対して相続税が課されます。相続税は相続財産から支払うものなので、亡くなった後に仮想通貨が急落した場合、課された相続税が払えないというリスクがあるので注意が必要です。また、相続税において、金銭での納付が困難な場合は、相続財産そのもので納付できる物納という制度もありますが、今のところ仮想通貨での納税は認められていません。
2017年は仮想通貨が急激な値上がりをしたことを受け、国税当局は仮想通貨での利益を得た投資家のリスト化に着手しているという情報が出ています。現時点では、仮想通貨がらみの脱税報道は出てきていませんが、税務調査の期間などを考慮すると2019年以降に脱税報道で、不正行為が明るみになっていくことでしょう。
[執筆者]
上田 智雄 (うえだ ともお)
1975年生まれ。税理士。いっしょに税理士法人(渋谷区恵比寿)代表社員、デルソーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役。主な監修本に、『納税で得する一覧表』、『取り戻せる税金一覧表』、『人生の節目の書類書き方教えます』(以上、サプライズBOOK)などがある。