> 特別連載コラム:~高齢化社会と AI ④ 高齢者でも安心! 電子決済(キャッシュレス決済)~
2021年 冬号 特別連載コラム
高齢化社会と AI ④ 齢者でも安心!
電子決済(キャッシュレス決済)
2021年 冬号 特別連載コラム
高齢化社会と AI ④ 齢者でも安心!
電子決済(キャッシュレス決済)
高齢者のキャッシュレス化
高齢者のキャッシュレス利用率は、他の年代と比較しても著しく低くなっています。長らく現金支払いを行ってきた人たちが、新しい決算手段を利用することに拒否感を感じるのは当然ですが、そのことがキャッシュレス決済の普及が進まぬ要因の一つになっています。
しかし、小銭の用意が不要になり、決済情報を確認することで金融被害にあっていないかを見守れるなど、メリットも高齢者にとってメリットも多いのです。
世界各国のキャッシュレス化の背景
世界各国がキャッシュレスを積極的に進めていく背後にあるのは、近年のICT(Information and Communications Technology:情報通信技術)の進化に伴う価値観の変化です。
その変化をとらえた代表的な言葉は「データは21世紀の石油」です。石油は富を生んできました。石油はいろいろな物を作ったり動かしたりするために必要で、その働きによって生活は快適になりました。これからはデータによって生活が快適になると考えられます。ありとあらゆる生活の情報をビッグデータとしてクラウドに集積し、これをAIで解析することによって人々の生活が向上するというわけです。
そして、企業のみならずデータの活用が国の発展に大きな影響を与えることと考えられています。キャッシュレス化は、決済や消費に関するデータが豊富に蓄積されるため、新しい富の源泉となり得る可能性が高いからです。
日本が目指している社会
2016年1月に内閣府が提唱した日本が目指すべき未来社会の姿として「Society5.0」があります。
Society5.0は、「仮想空間(サイバー空間)と現実空間(フィジカル空間)を融合させたシステムにより、経済の発展と社会的な課題の解決をする人間中心の社会」を指します。このプランのうちSocietyには次のようなものがあります。
Society 1.0 狩猟社会(人類誕生してからの社会)
Society 2.0 農耕社会(紀元前13,000年前からの社会)
Society 3.0 工業社会(18世紀末からの社会)
Society 4.0 情報社会(20世紀後半からの社会)←現在
Society 5.0 サーバー融合社会(21世紀からの社会)
これまでのSociety4.0では、仮想空間にあるビッグデータは、一部のリテラシーがある人だけが価値を享受してきました。Society5.0では、ビッグデータの解析をAIが行い、ほとんどの作業が自動化されるため、誰もがデータの恩恵をうけ、差別もなく豊かに暮らす権利を実現します。つまり、弱い立場にいる高齢者や障害者なども積極的に参加できるのです。
Society5.0への入り口
キャッシュレス化への取り組みは、Society5.0に向けた入口です。
Society5.0で必要とされるデータは、キャッシュレスに付随する個人情報の共有が基盤となります。Society5.0の社会の中では個人情報が活用され、利用者が店内に入店する際にキャッシュレス端末に自分を認識し、店内で欲しい商品を選んでそのまま出ていくと決済が完了すると考えられます。
ここでの購買者の年齢、性別、職業、などのデータをクラウドにあげていき、AIによる需要予測をしていけば、購買者の欲しいものが欲しい時に手に入ることになります。また発注者は不要な在庫を抱えないで済むためムダな発注をしないで済みます。これがバリューチェーン全体で導入を進めれば社会全体のムダな生産も削減できます。
キャッシュレスによって新しい社会へ
日本は、これから少子高齢化社会という人類史上見たことがない世界に進んでいきます。これからの未来を築いていくためには、社会全体のコストを抑えることはもちろん、すべての人が平等に豊かに暮らせるSociety5.0の実現には大きく期待したいところです。
キャッシュレスは、高齢者をはじめすべての個人にとって利便性もあります。
それだけではなく、その先にある「経済発展」と「社会的課題の解決」の両立を目指すため、社会全体として取り組んでいく必要があります。
キャッシュレスは、高齢者をはじめすべての個人にとって利便性もあります。
それだけではなく、その先にある「経済発展」と「社会的課題の解決」の両立を目指すため、社会全体として取り組んでいく必要があります。
■執筆者 上田 智雄(うえだ ともお)
1975年生まれ。税理士。いっしょに税理士法人(渋谷区恵比寿)代表社員、デルソーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役。主な監修本に、『納税で得する一覧表』、『取り戻せる税金一覧表』、『人生の節目の書類書き方教えます』(以上、サプライズBOOK)などがある。