> 特別連載コラム:~キャッシュレス化加速への対応④ 高齢者のキャッシュレス移行について考えてみる~
いま、日本ではキャッシュレスにかかる活動が加速しています。その背景には、経済産業省が2018年4月に発表した「キャッシュレス・ビジョン」によって、2027年までにキャッシュレス決済比率を40%とする目標を設定した上で、将来的には世界最高水準の80%を目指すとした「支払い方改革宣言」が提示されています。
現在、キャッシュレス決済比率わずか18.4%である我が国が、目標値である40.0%まで拡大させるためには、現金志向の高いシニア世代のスイッチングが急務とされています。
高齢期になると新しい取り組みをすることが苦手になります。これは脳の機能が低下してくることによって、記憶したものを取り出す力が弱まるからと言われています。また、これに年を重ねることによっての意欲低下などが加わることで、より一層新しいことに積極的に動こうという力が弱まってくるものです。
そうして、私たちはどこかで、「高齢者はキャッシュレスにはならない」という諦めに近いものを感じがちです。ところが、いまどきの高齢者はアクティブな人も増えています。
そこで、高齢者もキャッシュレスを活用してもらうメリットについて考えてみたいと思います。
特典がある
定年退職後は年金収入に頼ることになり、生活規模を縮小して、支出を抑えていかなければいけなくなります。倹約に役立つものがあればぜひ利用していきたいものです。
今、消費税率の改定による消費の落ち込みと、小売り店舗などの人手不足の解消のため、キャッシュレス決済することに対して国の優遇措置が発動されています。日常的な買い物を現金ではなくキャッシュレス決済にすることで2~5%のポイント還元がつきます。
また、キャッシュレス決済は、各種決済会社の競争も熾烈になってきており、国の優遇措置に加え、自社決済サービスへ誘導するため、さらなる還元キャンペーンも発動されています。
また、高齢者についてはキャッシュレスの利用によって、高齢者独自の特別の特典が付くものがあります。こういった特典を利用することで、生活費を下げることができるのです。こういった制度によって、支出を減らすことが可能になっていきます。
高齢者向けのキャッシュレス支払い特典サービス
■イトーヨーカ堂
60歳以上限定の「シニアnanacoカード」
15・25日のシニアナナコデーは5%割引
■イオン
65歳以上限定の電⼦マネー「ゆうゆうワオン」
毎月15日にはゆうゆうワオンのお支払で5%割引特典
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小銭を取り出すのが煩わしい
前出で案内をしたとおり、小銭を探してだすのは高齢者にとってはとても面倒なものになります。高齢になると指先の動きが悪くなり、小さなものをつかみにくくなります。小銭入れの小さな口を開けて小銭を取り出すのはとても大変な作業になります。さらにレジ待ちで後ろに列ができていれば、焦ってさらに作業は難しくなります。
また、高齢になると計算力も低下します。「会計は483円です」と言われたときに、小銭で足りるのかどうか? なるべくお釣りが少ない出し方はどうすればよいだろうか? と考えるのも焦るものです。
これらの小銭のやりとりの煩わしさを無くすことで、とてもスムーズに買い物ができるようになるのです。
見守りができる
家族にとっては、高齢者がちゃんと暮らせているかどうかについて心配になるものです。多くの高齢者は、住み慣れた地域や自宅で暮らし続けることを望んでいるため、家族は遠隔地で暮らすことが多くあり、見守ることができなかったりします。
キャッシュレス決済であれば、家族がアクセスすることの許可をもらえれば、高齢者の暮らしぶりを見てあげることができます。そうすれば家族も本人も安心であることもあるでしょう。
また、高齢者の現金の持ち歩きは危険でもあります。お金を落としてしまったり、ひったくりに遭ったりという被害の可能性もあり、これを避けることもできます。
時代に慣れておく
友達づきあいをし、地域活動などに参加をしたりして、社会とのつながりが多い高齢者は認知症リスクが46%低下するという研究結果を国立長寿医療研究センターが発表しました。
とはいえ、年を重ねるごとに人は「交友関係は」希薄になり、孤独な思いを抱えがちになっていくものです。
そんな昨今、世の中はインターネットを中心に情報が集中してきています。
FacebookやTwitterなどのSNSアカウントを開設し新しいコミュニケーション手段を手に入れている高齢者も増えているそうです。キャッシュレス決済にかぎらず、前向きにインターネットツールを積極的に取り入れていくことが、社会とのつながりを広げていくことにもつながります。そして、新しいスタートは刺激的ですし、「できた!」という達成感も得られます。
以上のとおり、高齢者がキャッシュレス決済を利用することのメリットがあります。
これから日本は、人口減少に合わせて少子高齢化がますます進んでいきます。その中で、人口ボリュームゾーンが最も大きい高齢者がキャッシュレス決済を「つかいこなせるかどうか?」に、市場のサービスは引っ張られていきます。
この高齢者が新しい技術を使えるようになることも、日本全体のサービス社会効率をアップさせることにつながっていくことと思われます。
以上のとおり、高齢者がキャッシュレス決済を利用することのメリットがあります。
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■執筆者 上田 智雄(うえだ ともお)
1975年生まれ。税理士。いっしょに税理士法人(渋谷区恵比寿)代表社員、デルソーレ・コンサルティング株式会社 代表取締役。主な監修本に、『納税で得する一覧表』、『取り戻せる税金一覧表』、『人生の節目の書類書き方教えます』(以上、サプライズBOOK)などがある。