そもそも働き方改革は、「日本が少子高齢化によって陥る労働力不足をいかに乗り切るか」というテーマから生まれたものです。よって、どう仕事のアウトプットを維持できるかが重要なポイントとなります。その仕事のアウトプットを測定する数値として、労働生産性があり次のような算式になります。

　この算式を分解すると次のとおりになりますが、働き方改革にて単純に労働時間をカットしたのであれば、労働生産性に変化がなければアウトプットである粗利益は減っていくことになります。 　この法則に抵抗し、粗利益を維持したいとすれば、値上げをするか、品質を落とすかしての対応が迫られることもあるかもしれません。しかし、いずれにせよマクロとしての経済は後ずさりすることになります。
　今や現状維持の戦略で、単なる働き方改革を乗り切るのは、もはや通用しない時代が到来してきているのです。
　そこで、私たちが取り組むべきものとして、イノベーションが掲げられます。
　イノベーションとは、「新しい価値と富を創り出し、経済成長を牽引し、そしてパイを広げる機能をもつ現象」を言います。このイノベーションが起これば、新しい価値と富が生まれ、ひいては労働生産性の飛躍的な向上につながります。ここでは、イノベーションについて見ていきたいと思います。

　これまで安定して市場をけん引してきたような大企業であっても、競争力を長期的に維持することが難しくなってきています。これは急速なテクノロジーの発達やグローバル化による海外からの安い価格の商品・サービスがどんどん入ってくるようになっていることに原因があります。
　これに対して、イノベーションが成功した企業は、たとえ零細企業であっても、数年でいともたやすく巨大企業に成長することができ、そして多くのお客さんを獲得し、マーケットシェアを大きく占めることができるのです。
　お客様のニーズは常に変化し続けています。これまでどんなに栄華を極めていた企業であってもその存在は、新しいイノベーターによって席を奪われることすらあるのです。

　ほぼ全ての企業が、周囲に多くの競合他社が存在していると思います。その競争は常に厳しく、その競争は相手がつぶれるまで続き、そして新規の参入を阻み続けています。
　もし、私たちが新たに電球を製造販売してみようと考えたとしましょう。今であれば、すでに世界中に競合他社がひしめき合っていて、新規参入するのはかなり難しいと思われます。しかし、電球以外で部屋を明るく照らす何かしらユニークなものを市場に提供することができたらいかがでしょうか。人々は電球を外して、新しいものを使い始めることでしょう。
　そうして、イノベーターたちは新しい市場を作って、その地位を築いていくことになるでしょう。

　時代とともに優秀な人材の就職先ランキングは変化してきています。終身雇用や年功序列があたりまえで、重厚長大型なビジネスが生き残っていた時代は終わりました。
　これからの優秀な人材は、新しい未来を創り出せる企業への就職を求めていくことになるでしょう。
　この潮流からみると、平凡な企業、つまり既存のアイディアをコピーしていきながら、ほんの少しの新しい何かを加えたような企業には優秀な人材は集まらないということです。
　これまでのその企業が繁栄してきたことではなく、イノベーションへの積極的な取り組みこそが、新しい人材へ興味を駆り立て、その実現をより一層高めていくこととなることでしょう。 　今、既に存在している企業は、その市場で一定のポジションを保ち生き抜いてきました。ただ、これは長時間労働を軸に得てこられた成果でもあり、過去の働きにすぎません。
　働き方改革を本質的に実施していくには、これまでの「改善」ではなく、「改革」が必要になってきます。その改革とは、非合理な行動をしていくことでもあります。すでにマーケットが合理的に動いているのであれば、チャンスは頭のよいお金をもった人たちによってすでに狩りとられているはずです。だれもが一見するとイマイチと思えるところにチャンスを見出していくしかありません。
　非合理にイノベーションに取り組むことが、本質的な働き方改革の実践になることでしょう。

　イノベーションと言うと、企業からすると空いた時間ができたらやる付随活動になりがちです。しかし、時代は変わってきています。企業にとってはコア業務と意識づけ「イノベーションをしないと会社は死ぬ！」というほどの意気込みでやることが必要になってきているのかもしれません。